エッセイ 不謹慎だから誰にも言えない話

エッセイ ブログ 面白い 笑える
通りすがりのいぬ

誰にも言えない話を
ここでしていいの?

アオヤマ

このブログは
「何があっても結局は笑っていたい」が
テーマとなっております。

もくじ

とある葬儀での話

その日は、若くして病気で亡くなった家族の葬儀だった。

いつかは・・・と分かってはいたけれど、その日はあまりに突然やってきた。
ずっと遠く離れて暮らしていた家族だった。

いよいよ治療を続けるのは難しいとなり、
会っておかなければと会いに行ったら突然危篤になって次の日逝ってしまった。
まさかこのタイミングで亡くなるとは夢にも思っておらず、
全員「信じられない」という様子だった。

彼は静かに、そしてようやく全ての苦しみから解放されたというような、
とても穏やかな優しい表情で息を引き取った。
眠っているようだ、なんてよく聞くけど、本当にそう思った。

道半ばにして病気でこの世を去った家族の葬儀。ただひたすら悲しみに暮れている。

気力を失いうなだれていると、ありがたいことにあちらこちらから献花が届いており、
いつの間にか立派な会場が出来上がっていた。

なんとも言えない気持ちで眺めていたその時、ふと目に入った物に「おや?」と思う。
ご住職様が座ると思われる椅子の横になんだかかっこいいスタンドマイクがあったのだ。
とても違和感がある。
なぜなら会場はお寺の式場で、そんなに広くもない場所だったからだ。
マイクごしにお経を読むのだろうか。
そして厳かな雰囲気に似つかわしくないチョットかっこいいスタンドマイク。

ついついいつものアオヤマがひょっこり顔を出し、
「ムム、もしや。ロックンロールな曲でも歌うつもりなのかい?」などと考えてしまう。

ハッとして「いかんいかんいかんいかんいかん・・・お葬式お葬式」と慌てて頭を振った。

そして葬儀は厳粛に執り行われた。

家族代表、友人代表の弔辞の際は、私はほとんど号泣していた。
なるほど、マイクは弔辞を読む人用だったのだ。
弔辞は元気に読んだりはしない。

そう納得して、葬儀も終盤に差し掛かったその時。
私は突然、椅子から転げ落ちそうな衝撃を受けた。

お経を読んでいた和尚さんが突然大きく手を振りかざし、
大声で
「ヤー!!!!!!」
叫んだのである。

マイクごしに。

耳キーーーーーン。

9歳になる息子が少し離れた場所に座っていたが、
「見てる、絶対見てる、まるい目してこっち見てる!!」と思い、急いで目を閉じた。
絶対に噴き出してしまうのは分かっている。
ダメ!!絶対に笑っちゃダメ!!とひたすら自分に言い聞かせ、目を閉じ続けた。
が、どうしても息子の反応を想像して笑ってしまいそうになる。

お願い!!
もう早く終わってーーー!!

こうして私の密かな努力のおかげで、葬儀は厳粛な雰囲気のまま無事終えることが出来たのだった。

このことはずっと心の中に閉まっていたが、先日息子に話してみたところ
「ママはずっと目ぇつむってたから悲しくてびっくりしなかったのかと思ってた。」と言われ、
我ながら周囲を欺く完璧な演技力であったと改めて満足している。

それにしても。あの「ヤー!!!!!!」は、ボリューム的にあれで正解だったのだろうか。
もしかしたら叫んだご本人が一番驚いていたのかもしれない。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
もくじ